数年前まで毎年ゴールデンウィークは、潮干狩りに出かけていた。
子どもたちは、最初のうち砂浜の泥に戸惑っていたが、一つ二つとアサリを掘り出すうちに夢中になってたくさん取り、近所におすそ分けした。
私が子どもの頃、アサリはスーパーマーケットではなく魚屋さんの店先の大きな桶で、ベロを出して塩をふいていた。
アサリのベロを指でつつくと、貝は素早く閉じた。
「気に入ったら持って行きな。」
魚屋のおばちゃんは、アサリをひとつ、手のひらに乗せてくれた。
こどもの私はアサリの生臭さにうんざりし、もうちょっかいを出さないことを誓った。